仕事で取引先へ足を運んだ。
担当してくれる社員の男性は、とても気さくで感じの良い方で。
とっても気さくで話しやすくて。
素敵な人だとは思っていた。
左手の薬指に光る指輪を見て、結婚をされていることは知っていた。
彼はどんな風に女性を口説くのかしら?
彼とデートしたらどんな風なのかしら?
そんな妄想を一度もしなかったと言われたら、嘘になる。
素敵だと思っていたけれど、それだけ。
それが……
途中から、彼の態度がなんとなくおかしいなとは感じていた。
なんだか、そわそわしているように感じたのは事実。
それから、二人になったエレベーターでふと
「今度、食事に行きませんか?」
なんだか丁寧な誘い方が
突然前フリも無く急に言われたその言葉が
なんかリアルで。
素敵だと思っていた。
食事に行きたいなぁなんて考えてもいた。
けれど……
それは、違った世界へ足を踏み入れてしまいそうで。
歩いている日常から、どこか転落してしまいそうで……