仕事が終わって、「お疲れ様」と声をかけて帰宅の用意をする。
今日は定時で帰ると決めていた。
絶対に定時に帰ると決めていた。
だから、事前に準備もしたし、誰にも声をかけられないように手早く会社を出た。
会社を定時に上がれば、スーパーに寄れる。
ワインを買って、チーズを買って、サラダを買った。
ワンルームマンションに帰ると、即座にテレビをつけた。
音が無い部屋は寂しい。
それから、ワイングラスを出して、サラダとチーズを並べて、セッティングを終えて
録画しておいた気になっていた映画をつけた。
オープニングがはじまると、ワインをグラスに注ぐ。
少し高価めのチーズを口に放り込んで、ワインを口に含んだ。
今日は私の誕生日。
馴染まない人と過ごすくらいなら、一人で過ごしたかった。
『あの映画、見た? 見てないのかぁ……面白かったんだよなぁ』
彼のそんな言葉がずっとひっかかっていて……テレビで放映することになった事に気がついて録画をしておいた。
ずっと胸の中に居る人がいる。
追いかける恋は上手く行かない。
そんな話はそこここで目にする。
だから、私は彼を追いかけないことにした。
追いかけてはいないけれど、胸の中に彼が住んでいる。
一向に出て行く気配もなく、居続けている。
もう一度チーズを口に放り込んだ。
ワインで流し込む。
このワイン、ちょっと渋いんだわ。
美味しいって誰かが言っていたから買ったけど、私の口には合わないみたい。
まぁ……酔ってしまえば味なんてわからなくなると思うけれど……。
そんなことを思ってワインを流し込むと、なんだか虚しさがやってきた。
今日は私の誕生日。
彼を追いかけないことにはしたけれど……
……もう、限界。
私、どうしたらいいんだろう……。
なんて事を思ったら、会いに来てください。
一緒に考えていきましょう!