彼とは2年ほどのつき合いになる。
会うのは、いつも居酒屋か直接ホテルか……
取引先の会社の担当者だった彼。
担当が変わったのをきっかけに、連絡先の交換をして――
大人の関係になるまでにそれほどの時間はかからなかった。
コンビニで買いこんだお酒を持ち込んで
ホテルで飲みながら、彼にスマホのサイトを見せた。
「ねぇ、ねぇ。ここのピザなんだけど、最近評判らしいんだ。食べてみたいと思っているんだよね」
「ふぅん」
と、彼は優しい声でスマホを覗き込むように私に顔を寄せる。
彼のいつもつけている香水の香りが鼻をくすぐって、なんだか安心する。
「いいねぇ。美味しそうだ」
「今度、食べに行こうかと思っているんだよね」
私が言うと、彼は目を細めて笑った。
「相変わらず、食べ歩きが好きだなぁ。色々知っているもんなぁ」
そんな会話を交わしたのは、木曜日の夜。
土曜日に、私はピザの店に赴いた。
予約が出来ないお店で、店に行くと列が出来ていた。
さすが人気店。
仕方ない。
一人で並んでいると、目の前に並んでいる女子大生らしき三人組が、楽しそうに話をしている。
「なんのピザにする?」
「え? これ意外と安くない?」
「店の中とか、結構可愛くない? インスタ映えしそうだし」
会話がかみ合っているのかかみ合っていないのか。
自由に発言している感じが面白かった。
私の後ろには男女のカップルが並んだ。
「このピザとこのピザが賞とったやつなんだよ」
と、彼女らしき女性。
「じゃ、一枚ずつ頼んで一緒に食べようか」
と、彼氏らしき男性。
いいなぁ。
一人じゃさすがに一枚しか食べられないよ……
いいや。
また、来よう。
ずいぶん並んで、ようやくピザにありつけた。
「おいしそう」
スマホで写真を撮影する。
いざ、実食!
一切れ取ると、チーズの伸び具合もまた食欲をそそって
ぱくりと口に入れると
美味しい!
これ、なに!?
ちょっと初めて食べたピザの味かも!?
美味しい!
彼に伝えたい。
これ、絶対美味しいよって今、伝えたい!
と、スマホに手を伸ばして
土曜日だから、連絡しちゃダメだった。
ということを思い出す。
土日祝は奥さんやお子さんと一緒に居るから、連絡しちゃいけなかった。
美味しいはずのピザは
やっぱり美味しいんだけれども、少しばかり色あせて感じて――
私、このままでいいのかなぁ……
なんだかもやもやしてきたら
会いに来てください。
一緒に考えて行きましょう!