会社で仕事をしていた時のこと。
部長と係長がなにやら近くで雑談をしているのが聞こえてきた。
「そんなのさぁ? 適当に花でも買って帰っておけばいいんだよ。女なんて、花さえ渡しておけば機嫌がいいんだから」
「そうですかねぇ?」
「そうだよ。小さいやつでいいからさ」
パソコンを打ちながら、そんなもんかなぁ? なんて思った。
別に、貰ったって私は嬉しくないんだけど。
その日の夕方。
半年前につき合うことになった彼から連絡が入った。
彼の仕事が忙しいらしくて、ずっと会えていなかったんだけど……
『今夜は一緒に居られるから』
ということで。
出張ついでのそのまま直帰を駆使して会いに来てくれるということなんだろう。
そして、明日は平日だからお互いに朝は出勤になる。
結局、我が家のチャイムが鳴ったのは夜23時を回っていて
ようやく彼が来たかと思って扉を開けたら
「遅くなってごめん」
彼が持っていた小さな花束。
タイミングが悪かった。
彼はきっと悪気もない。
でも、タイミングがあまりにも悪くて。
あまりに無表情だった私を見て、彼は表情を歪めた。
「なんだよ。わざわざ遅くまでやってる花屋に寄って買って来たっていうのに!」
「ごめん」
いらないし。
花好きとか言ったこと、一度もないし。
寄っている暇があるならそれより早く来て欲しいし。
そうじゃないと私、お風呂の片付けも出来ないし寝られないじゃない。
それに。
わざわざとか言うくらいなら、別に来なくていいし。
「嬉しくないの?」
嬉しくない。
「嬉しいよ?」
棒読みになった。
「お前って、女じゃないよな」
私、この人と合わないかもしれない。
花束を貰ってもやもやしてきたら
会いにきてください。
一緒に考えていきましょう!